新型インフルエンザの特徴

 連日新型インフルエンザのニュースが報道されていますが、情報内容に混乱が見られ分かり難くなっていようです。現時点で明らかにされている内容で重要な点は次の3点に要約されます。

(1)今回の新型インフルエンザは豚インフルエンザ、鳥インフルエンザ、人インフルエンザの混合型で今までに全くない新しいタイプ。

(2)病原性は弱く、従来の季節性インフルエンザとほぼ同程度。

(3)タミフル、リレンザが効く。

パンデミックの歴史

  新型インフルエンザに対する免疫が社会集団の中でほとんどないと、短期間のうちに感染を拡大させ大流行(パンデミック)になります。パンデミックの例として、1927年から数年間スペイン風邪が世界的に流行し約4000万人が死亡したことを映像付きで繰り返し報道するため、徒に不安を煽る結果となっています。メディアサイドとしては注意喚起の意図で発信しているのでしょうが、その情報だけ知らせるのでは正しい情報とは言えません。このスペイン風邪がその後どうなったかといえば決してなくなった訳ではなく、その後少しづつ形を変え現在も見られるAソ連型インフルエンザとして残っているのです。健康成人で現在まで1回もAソ連型インフルエンザに罹患しなかった人はいません。必ず一生のうちに何回かは罹ってしまうのです。今回の新型インフルエンザも数年後にはほぼ全員に感染してしまいます。インフルエンザ感染を封じ込めることは不可能です。

インフルエンザの死亡原因

 現在は過去のパンでミックとは大きく医療状況が異なります。スペイン風邪の死亡原因のほとんどはインフルエンザから併発した細菌性肺炎によるものでした。これは抗生剤が発見される以前の話です。1957年、1968年にそれぞれアジア風邪、香港風邪のパンでミックがありましたが、抗生剤の効果等で死亡数は著明に下がり200万人、100万人と推定されています。今回はタミフル、リレンザありますので死亡数はさらに大きく下ると考えられています。

新型インフルエンザの病原性

 今回のインフルエンザに罹患することを恐れる必要はありません。好むと好まざるに関わらず数年以内に皆が感染してしまいます。感染を回避することは不可能です。対策の基本はいかに軽く済ませて免疫を獲得するかが重要なのです。方法としては濃厚接触を避ける、発症したら早期にタミフルまたはリレンザを使う、予防接種をするの三つです。残念ながら予防接種はしばらく時間がかかるのでほとんどの人は予防接種なしで感染することになるでしょう。対策の重点は早期発見、早期治療に絞られます。そのためには発生情報を正確に、迅速に知る必要があります。

今後の流行予測

 軽症型インフルエンザとは言え普通感冒と同じ認識で良いわけではありません。インフルエンザは感染力が極めて強いのが特徴です。高温多湿の季節に向かい流行は一時頓挫すると思われますが、今年の冬は大流行が予想されます。今後この新型インフルエンザは数年にわたり世界的な大流行になることが予測されます。死亡率が高くない弱毒型インフルエンザとは言え、発症患者数が膨大な数ですから、重症患者数、死亡患者数は相当数が予想されています。現在の標準医療が受けられればほとんど問題ないと考えられます。しかし最盛期に果たして十分なタミフルが確保できるかが焦点になってきました。それらを勘案するとタミフルが潤沢にある今にこそ感染を終わっておいて本格的な流行期を迎えたほうが安心という考えも成り立ちます。もう一つの問題は医療にアクセスできない人達がいることです。国別格差、または地域間格差が大きく出てしまう可能性が指摘されています。正確な知識と迅速な情報が今後求められていくでしょう。

マスクの効果

新型インフルエンザは欧米でも患者が発生しているのに、なぜ欧米ではマスクをしている人が少ないのか疑問に感ずる人が多いようです。アメリカではマスクをしないようにテレビで呼びかけているのです。ではどうしてそのような差が出てしまうのでしょうか。マスク着用の目的は、次の三つに要約できます。(1)感染した人が他人にうつさない為の咳エチケット(2)飛沫感染(粒子の大きなもので2m以上は飛ばない)の予防(3)飛沫核感染、いわゆる空気感染の予防、の以上三つです。アメリカではマスクを咳エチケットには使うなと指導しています。咳をしている間はティシュで口、鼻を覆い、その都度捨てるようにと強調しています。日本の国立感染症研究所でも咳エチケットのマスクは頻回に変えるか、ティシュを使って直ぐに捨てるようにと指導しています。感染性の飛沫で汚染したマスクを咳のないときにも着けたままにすると感染性のエアロゾルを持続的に発生させる為感染頻度をかえって増やす結果になるので、咳エチケットでマスクは使うなという趣旨なのです。予防の為にマスクが有効かについては、有効と言う科学的根拠なしというのが欧米の指導です。国立感染研のホームページでもやらないよりやったほうがいいかもしれない程度のニュアンスですが、いつのまにかやらなければならないになってしまっているのは問題です。マスクにこだわるのはSARS(急性呼吸器症候群)騒動の時、医療従事者がサージカルマスクを着用していた場合に予防効果があったからなのです。しかしそれは至近距離で飛沫を浴びた医療従事者の話です。道を歩く時、たとえ満員電車の中でも、近くに(2m以内)咳をしている人がいない場合にマスクをするのは飛沫核感染を予防するのが目的になりますが、効果はありません。飛沫感染と飛沫核感染は分けて考えなければなりません。飛沫核感染は通常のマスクでは予防できません。今は飛沫感染が主体ですので確かにマスクは多少の有効性はあります。しかし飛沫感染でも呼吸器から直接呼吸器への感染経路よりも、実際に多い経路は飛沫が顔、体に付きそれを口に入れる経路の方がはるかに多いのです。手洗いの方がマスクより大事との認識が必要です。今は高温多湿の時期ですのでインフルエンザは飛沫感染が主体ですが冬になりますと飛沫核感染が出てきます。おそらくは爆発的流行になる筈です。そうなればマスクはほとんど感染予防の役にたちません。飛沫核感染予防のN95という特別マスクがありますが、これは着けると苦しくて30分ともちませんので、これは医療従事者が患者さんに短時間接触するときに使われるもので、一般的ではありません。

 

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